Ccfolia Log

キノ

キノ

精悍な顔に、分厚いコートと、太いベルト。
腰にはホルスターがあり、中には重たい物が入っていた。

キノ

少年のように見える少女は、小鳥の囀り声を聞こえる中を、歩いていた。

キノ

彼女は、この現代日本においては、世にも珍しい旅人だ。

キノ

Youtuberでもやりそうな、全国各地の旅をしている。
その名は、キノ。外国から渡る船を降りると、日本の街を巡ることにした。

キノ

浅草へ行き、雷門を訪れた。キノは別に、信仰に対し敬虔というわけでもないが、ただ国の、街の風土に、風習、歴史、文化を知ることを楽しみの一つとしている。

キノ

旅をするからには、せっかくなら物珍しいものと出会いたい。

キノ

多分、それが人情というものなんだと思う。なんとなくだけど。

キノ

「うん、面白かった」

キノ

呟いた。誰に言うわけでもなく。その顔は満足げだった。

キノ

「この国の歴史も、ならではの特色があるものだね。実際にこうして足を運んで、目で見てみないと分からないものだ」

キノ

神様に対し、敬意を払う。それはどの国でも、きっとやっていること。
しかし、この国の払い方は、面白い。
人の垢で繕わない、自然体の中に見出していた。そこに人間は、挨拶から始まり、儀礼に沿う。真心というものだ。

キノ

「次はどこへ行こうか……」
顎を触り、思索する中……噂話が耳に入る。

キノ

よくある、怪談話だった。ただ、その日はもう、特にやることも無く、手持ち無沙汰な状態だったから、すっかり学生さん達の話を横から聞き入ってしまった。

キノ

「変なの」

キノ

キノの感想は、あっけらかんとしていた。

キノ

「訪れた人が皆、行方不明になっているのに」

キノ

キノ

キノ

「なんで女の子を見たって、伝わってるんだろうね」

キノ

キノ

キノ

好奇心を擽られた。蓋を開けてみれば、存外、大したものじゃなかったりするかもしれない。
ミームと一緒だ。面白半分で、こういった人の恐怖心を煽る話をでっちあげ流布するのは、人類が昔からやっていることだ。

キノ

ただ、それでもキノは、『確かめてみてもいいかもな』と思った。
どうしてかって？
そんなものは……。

キノ

好奇心を擽られた。

キノ

誰だってそうだと思うよ。
今日は定食を食べようという意気込みで、外に出掛けて。
すると、道に新しいお店ができていて、どうやらバーガー店で。

キノ

排気口から、パティの肉汁を彷彿される匂いが香って。
美味しそうだなと思って、予定変更して、そこで昼食を済ませる。

キノ

目標を決めなければ、行動が続かないのが人間だけれども
その目標を、途中で切り替えちゃいけないだなんて、別にそんなことはないはずだ。

キノ

「寄り道だね」

キノ

旅人は、深淵へと臨むことにしたのだった。

キノ

キノ

キノ

CCB<=95 聞き耳 (1D100<=95) ＞ 92 ＞ 成功

キノ

人から話を聞くのは、得意……というわけでもないけど、身体に馴染んでいた。

キノ

さて、火のない所では、煙は立たないものだ。
空き家、と言ったって、新築の家に、まさか幽霊が出るなんてことは、あんまりないと思う。

キノ

以前は、誰が住んでいたんだろうね。

キノ

と、探偵ごっこをするには、落第かなと言った程度の情報を旅人は握った。

キノ

日本という国は、個人情報の取り扱いには細心の注意を払っているようで、その徹底ぶりは、他の国と比較しても高い方だと思う。

キノ

いち旅人が、現時点で得られるものだと、まぁこんなものなんだろうなと思った。

キノ

「空想するなら、その兄妹が消失した日に何かがあったかもしれないと見るのが妥当かなと思うけど」

キノ

ふと見上げる。国立の図書館があった。
申請すれば、インターネットも使わせてもらえた記憶がある。

キノ

「信憑性に関しては、首を捻るものはあるかもしれないけど、ただこうして喉に骨が詰まった状態のままというのも、落ち着かないしね」

キノ

ふらりと訪れることにした。冷暖房が効いていて、過ごしやすかった。

キノ

そしてキノは、運よく誰も使っていなかったパソコン席へ着席すると、立ち上げる。

キノ

キーボードを打つ。
空き家に住んでいた兄妹が、退去をした理由について。
……まともに調べても、出てはこないだろうから、オカルト掲示板でも見てみようか。

キノ

CCB<=70 図書館 (1D100<=70) ＞ 89 ＞ 失敗

キノ

CCB<=80 幸運 (1D100<=80) ＞ 37 ＞ 成功

キノ

ブルーライトが、緑色の大きな瞳に反射される。

キノ

「これは……」
きな臭さが、うんと増した。兄妹は、退去ではなく……死去によって、あの家は誰のものでもなくなった。

キノ

その内容が定かであるかどうかはともかく、本当なのだとすれば悲惨だし、嘘であれば、これを書いた相手に憤怒の念を抱くと思う。

キノ

「……とは言え、火はある方が、自然だしなぁ」
背凭れに寄り掛かり、ぽつりと呟く。

キノ

「よし」
と決まれば、あとはもう行動あるのみだ。

キノ

キノ

キノ

「そういうわけで、依頼をしてみようかなって思うんです」

キノ

どこで巡り合ったか？ここがどこか？
そこは、大して重要な情報なんかじゃない。

キノ

「法治国家ですからね、ボクも旅人。郷に入っては郷に従いたいのが心情です」

キノ

「20万円でどうでしょうかね、貴方の1日貸し切り」

キノ

「ああ……やはり、商人さんも知っていましたか」

キノ

「恐ろしいですね、本当なのだとしたら」

キノ

キノが商人へ接触した理由は、簡単だ。
空き家と言えど、今はおそらくは市か、あるいは不動産の所有物となっているはず。
そうなれば、無断での侵入は立派な犯罪となる。お縄になることは、避けたい。

キノ

そこで、顔の利く商人に頼ることにした。
世渡りは、結局は人に頼ることが一番効果的。

キノ

「ただ……もしも、本当なのだとしたら」
同じ言葉を重ねて、商人を見上げる。

キノ

「ちょっと、面白いかなとも、思います」

キノ

キノの『目的』だった。それを打ち明かす。
それを確かめることができたら、この契約は満了。
実に簡単なものだった。

キノ

ありがとうございます。と頭を下げる。
そして、彼の帰りを律儀に待つことにした。

キノ

「おかえりなさいゼーレンさん、いかがでしたか？」

キノ

「そうですね、そうしましょう。それと、根回しいただきありがとうございます」

キノ

横に並び、空き家へと歩き進めながら。

キノ

「そして、地域の方々にも感謝ですね。波風立てることを良しとしない国民性に由来するのでしょうかね」

キノ

なんて、特に話を広げるつもりもない、そんな感想を溢しつつ。

キノ

「しかし、驚きました。まさか、持ち主の方がご存命だとは、少し後ろ髪が引かれる思いではありますが……」

キノ

「事の真相は意外にも、服毒自殺は嘘で、妹さんが存命のまま住んでいました、なんてものだったりするのかもしれませんね」

キノ

「そうですね、ボクもそれで満足して、20万円ともさようならです」

キノ

「着きましたね」
大きな瞳を向けると。

キノ

「生い茂ってますね」
建物を見上げて、最初に漏れた感想が、それだった。

キノ

これだと、住んでいるかも、とは思いにくくも、ゼーレンの言うように、管理が杜撰だった、なんてオチもあり得る。どっちにも、全然転がる。

キノ

「あれ、空き家であれば戸締りしてあるのが、普通かなとは思いますが……」

キノ

とは言え、お化け屋敷扱いされているのだ、もう誰かが鍵を壊した、なんてこともあり得る。

キノ

ゼーレンの振る舞いを見て、この国における『タテマエ』というものを見やって、見様見真似で声を繕う。

キノ

「大変ですね、住んでいるの方の様子を見に行かなければ」

キノ

多分、これで面目と言えばいいのか、大義と言えばいいのか、まぁ、繕えたんじゃないかな。

そして、ゼーレンに続くように、中の様子を見やる。

キノ

これには、驚いた。不意を突かれた。
まさか、玄関でいきなり出くわすだなんて思わなかった。

キノ

「………　……鍵、開いてましたよ？」
苦し紛れに、言葉を繕う。苦々しい表情で。

キノ

1D100<=80 正気度ロール (1D100<=80) ＞ 50 ＞ 成功

キノ

タテマエというものを、続ける。
ただ、どうにも、どう表現すれば分からない悪寒が迸った。

キノ

目の前にいる少女には、血が通っていないように見えた。
それが、先入観から生じて、そう見えているだけなのか、それとも……なのか。

キノ

今すぐには、分からなかった。

キノ

「……いや、そうじゃないですね、申し訳ありません」

キノ

「すぐに引き返します」

キノ

「………」
その背を見て、目を細める。

キノ

「……歓迎、されているようですし」

キノ

「とりあえず、着いていってみます？」

キノ

これが、歓迎によるものなのかどうかは分からない。
さらに言えば、『お待ちしておりました』と。
まるで、自分達が訪れることを、先んじて知っていたかのように。

キノ

ハッキリ言って、不気味だった。

キノ

ただ、不気味ではありつつも、好奇心の芽は潰えていないわけで……。

キノ

「ええ、もちろん。ありがとうございます」
礼には礼を。靴を脱ぎ、揃えて。

キノ

「お邪魔します」
きっと、少女からの返事はないだろうが、儀礼の言葉を添えながら、少女の後を着いていく。

キノ

……手入れが、施されていない。

キノ

「……まるで、自動人形のようですね」
少女の行方を目で追い、キッチンへと消えていくのを確かめた後、そう漏らす。

キノ

しかし、埃っぽい。おかけするにも、服が汚れてしまう。

キノ

「……まさか」
まだ、確定はしていないはず。幽霊が実在するとは、まだ信じ切れない。
同じく声を潜めながら、そう返すと……手が、机へと触れる。

キノ

蔦の感触が指に触れ、ついそちらに目をやる。

キノ

CCB<=95 目星 (1D100<=95) ＞ 100 ＞ 致命的失敗

キノ

1D100<=79 正気度ロール (1D100<=79) ＞ 67 ＞ 成功

キノ

「うおっ……！？」
柄にもなく、驚いてしまう。雰囲気に圧されてしまっているのだろうか、と思うも、また目につくは、ノート。

キノ

「……？……ゼーレンさん、これは……？」

キノ

ノートをぱらりと、開いて。

キノ

「………！」
その三文字は、胸騒ぎを起こすには十分過ぎるほどだった。

キノ

CCB<=60 アイデアチャレーンジ (1D100<=60) ＞ 52 ＞ 成功

キノ

「……そういう催しと後から知らされてもおかしくないくらいですね」

キノ

その警告と、その救命要求は、偽と見るには……あまりにも、生々しく見えた。

キノ

同じくであった。皆目見当がつかず、手に取ろうにも靄を掴んでいるようで……。

キノ

「掃除好きであれば、猶更……でしょうね」

キノ

来客の、目に見えるすぐ近くに、このようなものを置いておく心理も、よく分からない。

キノ

「ズボラで、粗暴な性格なら、それなりに線は繋がりますけど」

キノ

「……あの少女は、どうにもボクの目には、そうは見えない。むしろ、几帳面な……」

キノ

「……」
行動には、すぐには移せず、黙し止まる。

キノ

訝しげに、差し出された紅茶を見やる。

キノ

カップを手に取り、鼻の傍で、すんすんと嗅ぐ。

キノ

「……ボク達は、これは、『何』を試されているのでしょうかね」

キノ

明らかに異様な室内、異様な少女の振る舞い。
そして、差し出された、真っ赤な紅茶。
旅人ですらなくとも、これは簡単に飲んではならないと踏み止まるだろう。

キノ

「……逞しいですね」
そんな様子に力みが失せ、キノも僅かに微笑む。

キノ

「こんな時でも、商いに目を光らせるのですから」
だからこそ、キノはその人種を同行者として選んだ。

キノ

実利の為に動く、それ以外では動かない。
そういった分かりやすさが、彼らの『信用』に繋がる。
だからこそ、取引する相手も、『安心』できる。
彼らは、そうやって社会を生き延びてきているサバイバーだ。

キノ

「それもそうですね」
キノにも当然、『備え』はあった。
危険に遭うことは、何度もあった。薬物を投与されかけることもあった。

キノ

「では、いただきましょうか」
で、あるならば。

今は、この旅をむしろ、愉しんでみよう。

キノ

1D100<=78 正気度ロール (1D100<=78) ＞ 90 ＞ 失敗

キノ

1d6 (1D6) ＞ 1

キノ

─────彼女は、一体ボクをどこへ誘うのだろうか。
揺れ動く頭の中、意識がぷちり、ぷちりと切れていく中……。
そう、思った。

キノ

花の蜜が、意識の覚醒を促す。
解放的な風が、頬を沿っていく。

キノ

「ゼーレンさん、商人である貴方に、まずは聞いてみようかなと思います」

キノ

「明らかに異様な紅茶を服用され、そして今、ボク達の目の前に広がっているのは」

キノ

「それはそれは見事な、鮮やかな、心休まる花畑」

キノ

「どう思います？」

キノ

ゼーレンの返答に、キノは『同意』をしてしまう。
二つの思考が、キノの脳裏に存在していた。
これは、明らかな薬物だ、幻覚だ。というものと、それはそうと、なんて心地良いのだろうかと、今すぐにでも駆け出してみたいなというもの。

キノ

蝕まれてしまっていた。冷静にそう判断した。快楽に浸かっていた。

キノ

「ええ、その通りです。薬物への耐性はあるんですけどね」

キノ

「初めてです」

キノ

CCB<=95 聞き耳 (1D100<=95) ＞ 39 ＞ 成功

キノ

「……おや」
花々の揺れる音、風の吹き抜ける音、集う蜜蜂がいれば、その羽音を聞くために耳を立てると。

キノ

声の主へと、顔を向ける。
ゼーレンへも、手招きをして呼びかけながら。

キノ

驚いたように、目を少し丸くさせつつ。

キノ

「これは、どうも　……キミは、この花畑の所有者かな？」

キノ

さっきの機械応答のような少女とは違う。応答ができる。それにも少し吃驚しつつ。

キノ

「じゃあ、キミは一体……？それに、ここは？」

キノ

「ミラ……　すると、キミは」

キノ

「ひょっとして、森名ミラ……という名前かい？」

キノ

「ああ、いや……　……お兄さんと、知り合いで」

キノ

キノは、正直言えば、困惑の中にあった。

キノ

やはり、オカルト掲示板にあった、兄妹の内、妹が服毒自殺、というのは……嘘、だったのだろうか。

キノ

いや、しかしそう結びつけるには、状況がノイズだった。
みんなが、幸せに暮らしている……『楽園』……？
あの家のどこに、この場所へ通じる道が、あったのだろうか……。

キノ

指差す方へ、キノも目を向ける。

キノ

「……ええ、良い場所だとは、ボクも思うんですけどね」

キノ

「……ミラさん、それは……」
ミラの方へと、静かな顔を向けると。

キノ

ゆっくりと、首を横に振るう。

キノ

「それは、できない」

キノ

「ボクは、滞在期間を3日間と決めているんだ。たとえ、どんなに素敵で、どんなに素晴らしい場所であっても……ね」

キノ

「それに……ミラさん、いいのかい？」
じっと、緑の瞳が向けられて。

キノ

「お兄さんが、心配してしまうかもしれないよ」

キノ

目を細めた。

キノ

その意味が成すところは、つまりは─────。

花々が送る高揚の中、ひりりとした感触。心臓に触れたカッターのような。

キノ

CCB<=80 POW×5
えい (1D100<=80) ＞ 97 ＞ 致命的失敗

キノ

ファンヴルが多すぎる！

キノ

1D100<=77 正気度ロール (1D100<=77) ＞ 1 ＞ 成功

キノ

ええ…1クリった

キノ

なすのクリ温情くれ

キノ

！

キノ

1d6 (1D6) ＞ 1

キノ

「─────……ええ。そうですね」
微睡み、思考はゼリー状のように溶ける。蕩けた瞳のまま、芯の無い返事。

キノ

ふらりと、食虫植物の放つ香りに誘われる、小さな虫のように……。

キノ

「─────うあっ……！」

キノ

寝起きの、半覚醒状態時に、頭をハンマーでも殴られたような気分。

キノ

星の中央へ引かれる重力に、真っ逆さまに、足掻くこともできず、ただ落ちる。

キノ

「……あれ……ここ、は……」
半身を起こし、蕩けた瞼を力づくで開く。

キノ

「……ひやひやしましたね。過信は厳禁、強烈な薬物でした」

キノ

眠るゼーレンの体を大きく揺らし、起こそうとする。

キノ

「ゼーレンさん、起きてください、ゼーレンさん」

キノ

まだ一押し足りないか、ただ、刺激があれば十分。

キノ

CCB<=50 こぶし (1D100<=50) ＞ 32 ＞ 成功

キノ

1d3 (1D3) ＞ 1

キノ

ノーダメです

キノ

頬を、手加減しながら、ぱしりと引っ叩く。

キノ

室内に乾いた音が響く。

キノ

「ええ、おはようございます」

キノ

「これに関しては、ボクも少し羽目を外し過ぎた、というものです」

キノ

そして、頷きながらも、神妙な表情となる。

キノ

「戻りはしましたが、まだボクらは危ういかと思います」

キノ

「何せ、ここまで強力な薬物ですから、おそらくはまだ……」
自分の腹に手を置く。

キノ

「……」
その答えを、キノは言葉にすることができなかった。

キノ

「……ゼーレンさん、今は……解毒薬を探しましょう」

キノ

「人を殺す薬は、誤って服用した者が対処できるように、解毒薬とセットで作られているものなんです」

キノ

「この屋敷を探せば……もしかしたら、あるかもしれません」

キノ

「ええ、頼りにさせていただきますよ」

キノ

「高いお金払ってるんですからね」
薄らと口角を上げてみせる。

キノ

「おや、ゼーレンさん、いい物を見つけましたね」
横から覗き込み。

キノ

「ボクは一応旅人しているので、植物学を稼業にしている人から、ノウハウを教わったことはあるのですが……　どちらかというと、こういう『品定め』は」

キノ

「ゼーレンさんの得意とするところでしょう、成分など調べられますか？」

キノ

「いかがでしたか？」

キノ

「……既にすり替えられてしまった？いや、でも……パックの見た目は、同じですね」

キノ

まじまじと、パックを見つめつつ、思索して。

キノ

「するとやはり、何か錠剤か、液体か……後から投入した、という線が濃いかもしれませんね」

キノ

「簡単にはいきませんね、残念です……」

キノ

気難しそうにリビングを見渡すと、ふと、ソファが目に入る。

キノ

CCB<=95 目星 (1D100<=95) ＞ 61 ＞ 成功

キノ

別に、何か手掛かりになるというものでない。
ただ、なるほどと、心に思う。

キノ

ここに住んでいた兄妹が、計画していたのだろうか。

キノ

手に取り、ガイドブックをぺらりと捲る。

キノ

「……こんなにも付箋を貼って……綿密に、計画をしていたのでしょうかね」
声のトーンが、薄らと落ちる。

キノ

蔦塗れの、精神を逆撫でする空間の中に見つけた、『日常』の中の……ちっぽけな、贅沢。

キノ

生活を思わせるものがあり、キノはなんとなしに、複雑な感情を抱く。

キノ

当然、ガイドブックには目ぼしいものなどあるはずもない。
ここから汲み取れる情報は、兄妹はここへ行きたがっていたかもしれない、という、それだけである。

キノ

「おっと　……ああ、いえ、特に、何も」

キノ

「2階　……森名兄弟の個室があるかもしれませんね。そこに何か、手掛かりがあるかもしれません、行きましょうか」

キノ

ガイドブックを脇に挟みながら、ゼーレンの後を追う。

キノ

─────そして、ホルスターを外すと、中からパースエイダーが顔見せる。

キノ

「どちらの気分です？」
左右へ目を配りながら。

キノ

パースエイダーへ弾を込める。

キノ

「ええ、勿論。ゼーレンさんの身は必ず守りますよ」

キノ

「なので、ご内密に」
自分の唇の上に人差し指を立てながら、ゼーレンの後を、同じく忍び足で続く。

キノ

「……お兄さんの部屋、でしょうね」
警戒した目つきで、部屋を見渡す。中には、他に人物らしき者はいないようだ。

キノ

「……」
言われてみれば、その通りである。家出をするにしても、荷物が数多く残っているように見える。

キノ

人類学で代行したいですー
見様見真似ー

キノ

CCB<=82 人類学 (1D100<=82) ＞ 48 ＞ 成功

キノ

ゼーレンが探す本棚を、同じくキノも目を通し、目についた本を幾つか開いていく。

キノ

その中で……おそらく、一番読み込まれているであろうページが、見つかる。

キノ

「……ゼーレンさん、これは……もしかしたら」
真剣な表情で、眉を顰める。

キノ

「お兄さんは、病院にいるかもしれませんね……」

キノ

こくりと、頷く。重々しく。

キノ

「……何か、第三者の介入があるかもしれませんね」

キノ

本をぱたりと閉じ、仕舞う。

キノ

「……それにしても、本当に生々しいですよ」

キノ

CCB<=80 幸運 (1D100<=80) ＞ 60 ＞ 成功

キノ

「…………」
ひらりと落ちた紙を拾い、その内容を目に通すと、眉を深く顰める。

キノ

─────立派な、お兄さんじゃないですか。
キノは、心の中でそう呟いた。

キノ

「……そうですね」

キノ

「とても……希望に満ちた目をしているように、見えます」

キノ

眉尻を、薄らと下げながら、小さな声でそう言った。

キノ

しかし、この兄妹の未来は、おそらくはもう既に、絶たれている。

キノ

「……あまり気分の良いものじゃないですね」

キノ

重々しく、頷く。

キノ

「……そういうことに、なりそうですね」

キノ

再び、パースエイダーを構えながら、もう一つの部屋へと、静かに向かう。

キノ

これまた、室内には人影の一つも無い、警戒した目つきは、一旦は解け。

キノ

「妹さんの部屋です。　……ここに、解毒薬があれば　……いいのですが」

キノ

CCB<=95 目星 (1D100<=95) ＞ 56 ＞ 成功

キノ

「………」
深刻な面持ちで、そしてゼーレンへも見せながら。

キノ

─────キノには、その選択肢は無いも同然だった。

キノ

「……ええ。……『家族』というのは、きっと、それだけ……」

キノ

あの写真の笑顔を思うと、心が痛む。

キノ

ぺらりと、頁を捲る。

キノ

目を細める。

キノ

「……『あの人』、そして……『根っこ』」

キノ

「匂う言葉。おそらくは……ここが、核心ですね」

キノ

こくりと、頷く。

キノ

そして……頁を捲る。

キノ

「………」
乖離を帯びる。常軌を逸し始める。この日記の書き手が、狂気に触れ始めている。

キノ

「……ボクも、そう思いたいです」

キノ

キノのトーンは、低く。深刻に。

キノ

そして……次の頁へ。

キノ

もう、止まる理由は無い。

キノ

捲る。

キノ

1D100<=76 正気度ロール (1D100<=76) ＞ 80 ＞ 失敗

キノ

1d6 (1D6) ＞ 5

キノ

🌈

キノ

CCB<=60 アイデア (1D100<=60) ＞ 66 ＞ 失敗

キノ

「はぁ……はぁ……！」
脂汗が滲み、胸を上下させる。

キノ

「……囁かれてしまったか……！」

キノ

「……点と点が、結ばれていきましたね。　……虚しくも」

キノ

悪人であれば、自業自得で悪魔の囁きに乗り、その結果非業を遂げたところで、それは自業自得だと、キノはシニカルに伏すも……今回のケースは、違う。

キノ

兄を思う妹が、家族を思うからこその、その善性の為に、悲劇が起きた。
……こんなことが、あっていいのだろうかと、歯噛みする。

キノ

「無ければ、ボクらの旅路はそれで……おしまいですよ」
肩を僅かに竦めながら。

キノ

ゼーレンが机の上に置いた、精神を逆撫でする書物へ、目を細める。

キノ

「………」
きっと、開いてはならないもの。見てはならないもの。そう本能が、囁きながらも……。

キノ

火中の栗を拾うには、多少の火傷も覚悟が必要だ。

キノ

人類学で代行します

キノ

CCB<=82 人類学 (1D100<=82) ＞ 53 ＞ 成功

キノ

素敵だね

キノ

1D100<=71 正気度ロール (1D100<=71) ＞ 30 ＞ 成功

キノ

1d10 (1D10) ＞ 7

キノ

CCB<=60 アイデア (1D100<=60) ＞ 2 ＞ 決定的成功/スペシャル

キノ

な、なんでここでクリティカル…？

キノ

「─────ぅ……ぐ……ぁ……」

キノ

物音。キノが崩れ落ちる音だ。冒涜的な書物を床へ落とし、崩れ、意識を失う。

キノ

表情は顰め、気を失い、魘されている。

キノ

「……ぅ……はぁ……はぁ……　……ま、ずい、意識、失ってましたか……？」

キノ

脂汗を滲ませ、余裕の無い表情で、ゼーレンによって起こされる。

キノ

首を横に振るう。

キノ

「いえ……ただ、花の蜜は香っていたので、危うかったです……」
袖で、額の汗を拭いながら、呼吸を徐々に落ち着かせていく。

キノ

「ありがとうございます……ゼーレンさん、助かりました」

キノ

「申し訳ないですね……ゼーレンさんを守ると約束したというのに、不甲斐ないです」

キノ

再び、パースエイダーを手に取りながら、より気を引き締めて。

キノ

「……ゼーレンさん、この部屋にはあとは、何がありますか？」

キノ

「ここまで何も無いと焦りが見えてきますね……念のため、探しましょうか」

キノ

CCB<=95 目星 (1D100<=95) ＞ 77 ＞ 成功

キノ

「…………」
見つけたものは、残影。かの少女の……在りし日の姿。

キノ

「……妹さんの隣にいるのは」

キノ

見覚えのある顔が、そこにあった。その姿よりも、写真の方が幾分か活力を感じるが。

キノ

「……ええ。　……きっと、この子も、当てられてしまったのかもしれませんね」

キノ

こくりと頷き。

キノ

「そうですね、もう少し改めて、深く探しましょうか」
そう言いながら、扉の外へ出ると……。

キノ

1D100<=64 正気度ロール (1D100<=64) ＞ 82 ＞ 失敗

キノ

1d3 (1D3) ＞ 1

キノ

「……ゼーレンさん、気を付けてください」

キノ

パースエイダーを握り、構える。

キノ

こくりと、頷く。

キノ

真剣な表情となり、物音の一つも立てず、ゆっくりと、階段を降りてゆく。

キノ

1D100<=63 正気度ロール (1D100<=63) ＞ 52 ＞ 成功

キノ

「いえ……あれは、人のようで……違う……！」

キノ

眉尻を吊り立て、照準を異形の怪物へと定める。

キノ

「まずい……！」

キノ

腕を口元に覆い、芳香を嗅がないよう抵抗する。

キノ

RES(15-25) (1d100<=0) ＞ 自動失敗

キノ

無理じゃないか！

キノ

「クソ……！また魅入られる……！」
眉間に皴を寄せながら、冷や汗を浮かべる。

キノ

「……ミラ……　……違う、ボク達は、来させられたんだ……！」

キノ

「ボク達は、もう知った……キミのやったことを……　そして」

キノ

首を横に振るう。

キノ

「人を模した、植物型の怪物と出会った」

キノ

「ここは、腹の中……そうだろう？……ミラ！」

キノ

「……その顔、その言葉……」

キノ

「騙されてじゃなく、キミは……自らの手で、こんなことをやっているのかい……？」

キノ

「─────待って、ゼーレンさん……」

キノ

表情を、顰めながら、そしてミラをじっと、見やって。

キノ

そして、一歩踏み出し、真正面に対峙する。

キノ

「……ミラ、もう一度聞かせてくれ」

キノ

「本当に、そう思っているのかい、キミは」
神妙な面持ちで、真っ直ぐと、刺すように、ミラを見やりながら。

キノ

ポケットから……紙切れを取り出す。

キノ

「……これを見てくれ」

キノ

それは、ミラの兄が残した、負の感情の嵐。

キノ

将来を失いかけ、精神に余裕を来たさなくなったのだろう。
ネガティブな言葉が続いている。

キノ

しかし……その中に。

キノ

『俺が生きることを考えるな。未来がある妹に託せ。俺にできることを考えろ。』

キノ

「……キミのお兄さんは、難病のせいで、人生が狂い、絶望の淵に立たされた」

キノ

「もう、何もかもに嫌気を差して、それこそ……狂ってしまいそうになっただろう」

キノ

「だけど……」

キノ

「ミラ　……キミのことだけは、切り捨てていない」

キノ

「難病の中でも、キミの未来を願っている」